【社長コラム】不動産投資について等

公開日:2018年06月14日

金持ち父さん貧乏父さん

不動産投資において大事な点について感じる事を不動産流通企業経営者の観点から書いてみました。これから投資しようとしている方への思いや、現在実際に投資されている方への投げかけになります。

ロバート・キヨサキさんの本に出会って

坂本周平

北章宅建株式会社の坂本です。こんばんは。

 

今回は不動産投資について思う事を書いてみたいと思います。私が大学1年生の頃、上記のロバートキヨサキさんの本に出会いました。この本を簡単に説明すれば、自身が労働する以外の収入を作り、いずれその収入で経済的自由を手に入れましょう、その具体例の一つとして不動産投資がありますよといった内容です。

 

英語の日本語訳文にしては読みやすい内容と、当時は思いもしない考え方にとても感銘を受け、少しばかり視野が広がった感覚がありました。但し、その事が理由で不動産業を職業として選択したのかと聞かれれば、それはそれとして私個人は父母に家を購入する手段と機会を提供したいと思い飛び込んだので、具体的に当時人生において変化が起きたのかと聞かれると、そうでもありませんでした。

 

又その後、不動産流通業で創業してから当時この本に出会った時に知り得た考え方を大きな抵抗感なく企業経営に応用、創造的模倣をする事が出来たのは、読書は人生においてやはり無駄ではないのだなと再認識しました。この本をきっかけとして、一種の不動産投資ブームが起き、サラリーマン大家、カリスマ大家、〇〇大家、セミリタイア、経済的自由という言葉をこのころより良く耳にする様にもなりました。不動産投資という一部の地主さんや玄人さん向けの資産形成、投資手段から、広く一般化出来た事はある意味良い側面もあったのだと思います。(その逆の悪い側面も大いにあります)

不動産投資、不動産賃貸業という業態の大事な管理点。企業経営と比較して

私は北海道の道央地方、特に札幌近郊から地方と呼ばれる地域を地盤とする不動産流通を主力とした中小企業の経営者になります。大半の中小企業と同様に、資金繰りが厳しいときも正直言ってありました。そういった時でも企業経営において大事なのは商品である「人」への投資であり、この人への投資についてはどんなに厳しくても手を付けるのは最後だと思い経営してきて現在に至ります。

 

当たり前ですが、きちんと給与を支払う、将来への希望を抱けるように待遇を少しずつでも良くする、教育を施す、福利厚生を厚くする、賞与を準備する、組織を作り分業する、その為に個性の違う人を採用する、採用活動にお金を使う、組織分析を行う、他にも様々あります。このどれもが最初は費用が掛かるが、効果的に行えれば、非常に有用なものとなります。人手を要する企業経営においてはどの業種業態においても絶対に外せない要点だと思います。

 

これに対して不動産投資、不動産賃貸業は人手をあまり要しません。物件を購入し、賃貸に出し、賃料を頂いて、収入とする。この一連の流れすべてを外注する事もあまり難しくなく、アウトソーシングサービスが非常に充実しています。この賃貸業については、物件数が個人や周辺で管理出来ない領域を超えた時に、その業務を内製化しない限りは従業員を雇用する必要もあまりありません。

 

こういった時に陥りがちなのは、人に対する投資をする必要がない分、大事な商品の劣化や不満、時代の変化に気づきにくく、収入から返済を引いた残りが自分の収入=年収、所得と勘違いしてしまいやすい事です。本来は不動産賃貸業も企業の経営の一種なのですから、賃貸収入=売上であり、キャッシュフロー=将来への投資の備えであるはずです。必要な経費を支払った残りは将来においての成長、安定の源泉となります。

 

不動産賃貸業において本来は大事な商品である物件に対して、企業経営における「人」と同じように、「物件」へ再投資を行い、品質を維持向上し、時には物件の不満(劣化)に対して涵養する様にメンテナンスを行い、時代の変化についていく商品構成にしていかないといけないのにも関わらず、それを怠り、極度な奢侈に走ったり、不労所得(所得でなく、単なる売上)を誇ったり、単に投資規模を大きくすればすべてが癒される(「売上高は全てを癒す」といった今はなきスーパーの経営者を思い出します)といった様な事を無計画に行えば行うほど、その商品(物件)は時代の変化に取り残されます。企業経営においては人への投資が大事なように、不動産賃貸業は物件への再投資(商品力の維持発展)が大事だと思います。

手残りという言葉により、財務を無視する危険な賭けに走る怖さ。物件が商品である業態は人が商品の業態よりも他人資本の肥大化によるリスクの高さは倍加する

企業経営においては手残りという言葉を実際にはあまり使いませんが、不動産投資や投資企画の世界では良く使用するようです。この言葉の響きは、給与の手取りに語感が似ているが為に、勘違いを生みやすいのではと感じます。

 

本来は手残りでなく、キャッシュフローと呼ぶべきなのかなと思いますが、どうも手残り=手取りのイメージで語られている事も多いような気がします。手取りのイメージだと借入を極限まで肥大化させて、そこから手残り(手取り収入という幻想)を増やせば、財務を無視してもいずれは何とかなる、不労所得(所得でなく売上。家賃年収というあまり分からない言葉を使われた本も見受けられます)を得られると考えられているとすれば、それを伝えない不動産会社にも何らかの責任がある様に感じます。

 

確かに、借入を増やし、健全な投資を行っていく事は事業が成長していく過程においては大事な手段ですし、当社も借入を利用していますが、これはあくまでも「人」への投資が前提となっています。

 

その借入を有用な投資に振り向けないといけないにも関わらず、手残りで自らの生計費も全て賄い、物件の修繕費も賄い、場合によっては納税資金も賄い(納税額を計算せず手残りと計算した場合)、その上で継続的に不動産賃貸業を継続的に発展させるという事は、物件が主要な商品の業態においては本来はあまり望むべくも無いのだと思います。

 

物件は人と違い、「文句や不満を口には出さない」「個性が人よりは少ない」「気分によるばらつきが少ない」「休息や食事をしなくても働いてくれる」というメリットもある分、「誰でもお金を出せば手に入れられる」「時間の経過とともに劣化する(人は時間の経過とともに成長する場合があります)」「移動や配転がしにくい」「組織や分業という仕組みに置き替えられず、硬直性が強い」「保有しているだけで税金がかかる」等のデメリットもあります。

 

ここに極大化した金融借入という重い縄が事業を縛ります。少しの環境変化で手残りが手残らず、手減りという状況に陥る可能性も十分に検討しないといけないはずです。こういったデメリットを考慮すると、手残りを再投資の資金として温存していく事も無く、借入を極大化させていく事がいかに危険か、その理解が不動産賃貸業の安定に非常に重要だと感じます。

不動産投資で良いパターンは、本業を別に持ち、借入を適度に抑えて、キャッシュフローを再投資に全額振り向けても生計が維持できる事だと思います

当社も不動産投資を行っていますが、本業はあくまでも不動産流通業であり「人」が事業の中心となります。不動産流通業で私の収入も賄い会社経費も賄っています。セミリタイヤ、不労所得を誇れるような時間的余裕も、富裕層を演じて誇れる様な内容もありませんが、地域に必要とされる以上、今後も働いていく事は一種の使命とも考えています。

 

当社は不動産投資で生み出されたキャッシュフローは口座を別にし分別管理を行い、基本的に不動産賃貸業以外へ資金流出をさせないで、再投資と部門の預金へ振り向けています。保有している物件の約8割は借入を起こさず購入しており、価格も身の丈に合ったものとしながら、少しずつ成長させています。入居者の方からも、「よく修繕に対応してくれるし対応も早い」「また次も御社の物件に入居したい」「融通利かせてくれてありがとう」、地元の賃貸仲介会社さんからも「御社はすぐクレームに対応して頂けるので紹介しやすいです」と言って頂く事も多く、地域へ少しでも役に立てているのではと感じます。

 

これもキャッシュフローを大事な「物件」にきちんと適度に振り向けている事が要因であり、やはりそれを行うには、自分自身がしっかり働いて、資産の上で眠らない(大きな借入を起こして行う以上、実際には眠れていません)という事が大事だと感じます。

 

これから不動産投資を考えられている方は、是非こういった派手さは無いが、一応真面目に語っているつもりの言葉も頭の片隅にでも置いて頂ければと思います。

 

北章宅建株式会社

坂本 周平

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